
Profile
加藤良子(かとう ながこ)
千葉県柏市のコワーキングスペースを拠点に活動しているママライター。街の紹介冊子や商店街マップ等を多数制作してきた。その経験とともに発達した触角(食覚?)をフルに動かして、「美味しいお店・素敵なお店」を探し当てるのが特技。最近は1人でも飲みに行けるようになっただけでは満足できず、「誰かを連れて行きたい!」という衝動のもとで足繁く夜の街に繰り出している。1日の3/4を柏で過ごしているのに「愛してるのはガンバ大阪」という謎の自称・飲み食い道楽女子。
Vol.7 良いまちには良いレストランがある~広東料理の精鋭「中国料理 文菜華」
time 2017/05/22
folder 中華料理店

外で食事をしようと思った時、何を基準にしてお店を選びますか? 食べたいメニューが決まっていない場合、まずはジャンルを決めてからその中で選んでいく方が多いのではないでしょうか。こうしていろいろなお店を取材させていただいていると、最近の人気店では料理のジャンル間に高い壁はなく、独自の新しいスタイルを確立している店が増えているように感じます。今回は、“油でこってりとした中国料理”というありがちなイメージを打ち破り、古来の方法で作る調味料や素材にこだわることで、本来の中国・広東料理の姿を追求している「中国料理 文菜華」をご紹介します。
“ハレの日”をスタイリッシュな空間で上質な料理を楽しむ
柏駅東口を出て、旧水戸街道沿いにある柏神社を目指して歩くと、柏市街地きっての美食店が集まる通り「柏銀座通り」の入口があります。フレンチ、イタリアン、アジアン、和食なら鰻屋、焼き鳥屋、居酒屋などなど、迷ったらここに来れば食べたいものが見つかるグルメストリート・「柏銀座通り」の“顔”ともいえる店が「中国料理 文菜華」です。
もとは普通の一軒家だったところを丸ごとリノベーションしたという店舗は、オーナーシェフの渡辺展久さんのこだわりが存分に反映されています。特に、一番手前に設置された厨房は、外の小窓からも見えるオープンな造り。それはまさに渡辺さんの「安心、安全で身体にやさしい料理」を提供したいという想いの表れ。「お客様には、出される料理がどんな風に作られているのかをいつでも見ていただけるようにと、どこからでも覗くことができる厨房にしています」と渡辺さん。
■天井は開放感あふれる吹き抜けに。温かみある落ち着いた雰囲気の店内は、照明や空間設計へのこだわりを感じる
■吹き抜けには、季節の植物を配することで四季を感じられる居心地よい空間に
■2階は8~10人程度で使える個室が1室。1階フロアを通らずに入口からすぐ階段で直行できるため、プライベートな集まりでの利用に重宝されている
渡辺さんは聘珍樓などで有名料理人のもと、広東料理を学び、2004年に中国料理古来の方法で作られている調味料を求めてタイ・バンコクへ渡りました。「アジアは華僑によって中国料理が広く普及していて、それぞれの風土に合わせた形で定着しています。ですが、化学調味料に頼らず、古来の方法で調味料を生産しているのは、中国本国や日本も含めたアジアの中でもタイだけといってもいいと思います。そこで、身体にやさしい中国料理を作るために自然素材のみを基にして作る“醤”を学んできました」。帰国後、千葉県初のアジアのご飯とフォーの店「アジアンヌードル展」を開店。柏に新風を吹き込み、さらなる挑戦としてこの「文菜華」を2007年に開店しました。
身体にやさしい料理には良い素材しかありえない
5年前から「文菜華」の料理には野菜と肉に関しては100%柏産の食材しか使っていません。身体にやさしい料理は素材の味がストレートに味が伝わるため、そのためにはやはり“旬”のものを使うことと、生産地が近いことなど食材の質が求められます。
「柏の食材を仕入れる時、僕は“道の駅しょうなん”や“かしわで”などの産直販売店から毎日購入しています。良い食材を継続して安定供給してもらうためには、生産力も安定してなくてはなりません。1社の生産者だけを応援するのではなく、柏全体の生産力を上げなくてはならないと思っています。なので、いろいろな生産者が作った同じ品種を食べ比べして、その時に自分が使いたいと思ったものを仕入れます。ですので、品種ごとに生産者も変わりますし、その時によっても違います。たぶん、一般家庭でも産直店で買った野菜がおいしいと思ったら、次もその農家さんの野菜を選んで買うのではないでしょうか? 多少高くても、生産者の想いがこもったものを選びたいと思いますよね?」安ければ買うのではなく、消費者も価値があるものを選んで買う時代になっているのだ、それは料理に関しても同じだと渡辺さんは語ります。
今、「文菜華」では野菜や米の他、肉も4社の生産者から個性に合った調理方法で提供。お茶、ワイン、紹興酒などのインポーターも含めて40社もの取引先の中からその時々のタイミングで仕入れています。
■「天然車エビと旬の野菜の炒め」素材の味がストレートに伝わってくる最小限の味付け。自家製の調味料と厳選素材のなせるわざだ。野菜の色が引き立つ真っ白なプレートで
■「本日入荷の活海鮮と柏野菜の炒め」予約のお客様に合わせ、“その時期に活きた素材”を寄せた料理に。また、お客様に提供する時に、スタッフから必ず食材の説明をしている。食事後、お客様が自分でも購入してみたいというケースも多い
■厨房に吊るしてある「北京ダック」は、利根川流域で育成された良質な鴨を使い、20種類もの調味料からなる「鴨醤」にて味付けされる。皮はパリパリ、肉はジューシーな部分によって違った食感を楽しんで
■「杏仁豆腐」「マンゴープリン」などのデザート。シンプルな美しさと同時に驚きも感じる器が「文菜華」オリジナル
経験に基づいた店舗プロデュースと地域の発展という考え方
ご自分の店づくりなどの経験も活かして、他店の店舗プロデュースもしている渡辺さんですが、ただでさえお忙しいのに大変ではないのでしょうか?
「お店を出すにあたり、相談されることが多いのですが、導線から内装、そして食器などもプロデュースさせていただいています。そのオーナーに合った形の店づくりと、これからの流行を見越して考えていますが、実際にその店が予約が取れないくらい流行っているという話を聞くと、まるで“自分で新店を出した気分”でとても嬉しいし、楽しいんです。他店はライバルではなく、共存していく存在と考えていて、周囲に良い店が増えることで、まちが発展して、最終的には自分に戻ってくる。それが本来の成功だと思っています」と渡辺さん。地域が一丸となり、お互いが切磋琢磨することが発展につながると考え、東葛六市レストランサミットへの参加、柏銀座通り「空市」開催など、地域の同業者との連携にも力を入れています。
「柏銀座通りって、夜、ぱっと見は意外と人通りはないんです。でも、店内を覗くと人でいっぱいだったり…そんなところが京都の祇園と似てるなあと。それは良い事だなと思っています。最近はちょっとリッチなお店が増えてきていて、それを求めてお客様がいらっしゃる。できれば飲食店だけでなく食材屋さんも増えてくれたら、商店街も元気になるんじゃないかなと思っています」。グローバルな視点で活動されているだけに、お店だけでなく地域全体のお話に…いろんなアイデアをお持ちの渡辺さんですが、基本は「柏にこの店があって良かったと思ってもらえる」ことなのだそうです。
さて、「文菜華」には大切な人と何かの記念日に、2階の個室を予約してひっそりとディナーに来ていただきたいですね。ぐっと好感度UPしますよ!
中国料理 文菜華
住所:千葉県柏市東上町2-2
TEL:04-7164-5211
※予約で満席の場合が多いため事前予約をお勧めします
営業時間:
ランチ 11:30~14:30 (L.O.13:00)
ディナー 17:30~23:30 (L.O.21:00)
定休日:月曜・第2火曜(祝日の場合は翌火曜)
アクセス:JR常磐線「柏」駅東口より徒歩7分。
柏銀座通りを進み、柏郵便局通りを渡って20m先左手。
席数:24席
HP:http://bunsaika.com/