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加藤良子(かとう ながこ)

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加藤良子(かとう ながこ)
千葉県柏市のコワーキングスペースを拠点に活動しているママライター。街の紹介冊子や商店街マップ等を多数制作してきた。その経験とともに発達した触角(食覚?)をフルに動かして、「美味しいお店・素敵なお店」を探し当てるのが特技。最近は1人でも飲みに行けるようになっただけでは満足できず、「誰かを連れて行きたい!」という衝動のもとで足繁く夜の街に繰り出している。1日の3/4を柏で過ごしているのに「愛してるのはガンバ大阪」という謎の自称・飲み食い道楽女子。

いいコト・いいトコ《其の一》 牛刀一丁を総手造りで~伝統を継承する鍛冶職人の技「五香刃物製作所」

time 2018/02/19

いいコト・いいトコ《其の一》 牛刀一丁を総手造りで~伝統を継承する鍛冶職人の技「五香刃物製作所」

いつもは私の好きなお店をご紹介する「あの人を連れて来たい店」ですが、今年から飲食店だけではなく、食器にまつわる仕事やイベント、その他みなさんにお伝えしたいことを突撃レポートしてしまう「いいコト・いいトコ」が始まります!不定期のコーナーなので、たまーのUPになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。その第一弾として、今回は千葉県柏市にある伝統工芸の技術を受け継ぐ鍛冶工房「五香刃物製作所」をご紹介します。

 

実は千葉県には江戸の“匠の技”を受け継ぐ職人が多く残っている

料理人が「匠」であるなら、その腕となっている刃物を造る人も「匠」。刃物鍛冶の「匠」というとなんとなく、岐阜県関市や福井県越前市、新潟県三条市、などの産地を思い浮かべてしまいます。ところが最近、「包丁一丁、一丁を最初から最後まで、一人で作ってしまう匠」が柏にいることを知りました。「へぇ~そんな身近なところに刃物鍛冶師がいるんだ!」と思いますよね?実は千葉県には意外とたくさん鍛冶職人がいるのだそうです。

卸問屋から製造元に。職人の技を絶やすわけにはいかない

「五香刃物製作所」は1989年12月に、社長の八間川憲彦さんが日暮里の刃物卸問屋から独立して設立。年が明けて1990年1月に卸問屋として創業しました。2a3a1554「創業時は南逆井に社屋があったため、最寄り駅が新京成線の『五香(ごこう)』駅でした。響きがきれいなのでそれを会社名にしたのですが、『五香』駅がある松戸市の会社だと思う方も多いですね(笑)」と社長の長男の義人さん。現在、鍛冶職人として実際に牛刀を造っているのは義人さんです。代々続いてきた工房ではないのに、義人さんはどうして鍛冶職人の道を選んだのでしょう?
「増尾に刃物鍛冶職人さんがいらして、もうすぐ工房を閉めて引退されてしまうという話を耳にしまして、その技術が受け継がれないのはとてももったいないと。そこで、うちに工房を作り、その職人さんをお招きしました。それが1995年で、工房を作るために今の場所に移転してきたのです」。それから義人さんはずっと、工房で職人さんが刃物を造る過程を手伝いながら見てきたため、大体の手順は覚えてしまいました。そこで、「覚悟を決めて職人の道を選ぶかどうか?」という局面にきた結果、職人になることを決めて“親方と弟子”の関係になったそうです。
                                        

受け継がれてきた凄腕の職人技から生まれる「関東牛刀」

「五香刃物製作所」の親方のように全工程を一人で仕上げることができる鍛冶職人が、柏にいることはあまり知られていないと思います。実は関東地方にはこうした職人が点々と存在していて、そのルーツは江戸時代。将軍様のお膝元に腕のいい職人が集められ、時代は明治、大正、昭和と流れてからは、技を受け継いできた凄腕の職人たちは東京の路地裏に小さな工場を持って、細々と仕事をしてきたのだそうです。また、関東地方は地価が高いため、大きな工場を建てることが難しく、結果的に一丁ずつ手工業で造っていく伝統技術が残ったのだといいます。
「実際、うちの親方も柴又で造っていたのですが、40代になってから増尾に越してきて、自宅兼工房で続けていました。千葉はそういう職人さんが結構いるんです。僕個人はその技を受け継いで、さらに若い人につないでいけると思っていますが、伝統技術を後世にきちんと残すには、もっと大きな規模で守っていかないといけないと考えたのです。そこで、まずは伝統技術で製造した『関東牛刀』を、2006年に千葉県指定伝統的工芸品に認定していただき、さらに国の指定伝統的工芸品として認定を受けるために、社長が千葉県中の鍛冶職人を周って集め、現在10社12名の技術者で千葉県打刃物連絡会を立ち上げました。そこで、『平成29年度 経済産業大臣指定伝統的工芸品』として千葉工匠具を認定していただけることになったところです」。

2a3a1649■牛刀の柄の部分に貼られているラベルは、千葉県が認定する「指定伝統的工芸品」の証

 

 

 

2a3a1660■「白紙」とは鋼の名前。日立金属の刃物鋼で、不純物を極力低減した純粋な炭素鋼。できあがった鋼を区別するために白い紙、青い紙を目印につけたことからそれが名前の由来になっている。「白紙」は合金成分が含まれていない加工の難しい鋼で、熟練した職人技によって、硬度と粘り強さを持った切れ味の良い包丁ができる

 

関東牛刀「下総国光月作」「武蔵國光月作」ができるまで

さて、「総手造りの包丁なんてどうやって作るの?」と思っている方、お待たせいたしました!まずはこの動画をご覧ください。言葉をならべるよりも、この熱い火花を、鋼を打つ音を聞いてください。

いかがでしたか?この煙の臭いや温度をお伝えできなくて残念ですが、改めて製造工程を画像でご案内します。

1) 粗取り
鋼を型に合わせて大まかに切り出す。

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2)型すり
  切り出した鋼をさらに型どおりにするために、グラインダーで削っていく。

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3)口金溶接・整形
少量で請けてくれる溶接の業者さんがなくなり、自分で溶接をせざるを得ないという。親方の教えの通り、アセチレン溶接という技術で行っている。溶接の後、削って形を整える。

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4)刻印
焼きを入れる前に銘の刻印をいれる。銘はブランドを示す大事なもの。八間川義人さんの銘は「光月」。

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5)焼き入れ 

熱から金属を守るために焼き入れる前に泥を塗る。1,000度近い炉での作業は熱との闘い。硬度を増すために焼き入れをするのだが、金属によって焼き入れ適温が違い、その微妙な色味を見分けるのが職人の技だ。白紙の鋼は850度まで熱する。冷却液は油。
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6)焼き戻し
一旦、冷やした鋼をもう一度炉に入れて焼き戻しをする。それによって分子が均一に並ぶため、安定した硬度が得られる。

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7)歪み取り
焼き直した後に、ハンマーで大きく叩くと割れてしまうため、タガネで小刻みに叩いて歪みを取る。

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8)柄付け、磨き
「下総国光月作」の場合、柄は積層強化木(パッカーウッド)を使っている。最後に研ぐことで、切れ味の良い牛刀ができる。

2a3a1782■行程に沿って並べられた加工途中の牛刀

世界から求められる日本の伝統工芸品の明日

義人さんが今、必死で守っている100年続いてきた技術ですが、この数十年で職人が減り、衰退の危機にさらされてきました。しかし、今まで実店舗での販売がメインだったため、一般の人にはなかなか認知されなかった品物が、近年のインターネットの発展により、日本国中どころか海外から直接注文が入るほどニーズが高まってきています。しかも商業ベースの注文だけでなく、個人からの注文も後を絶たず、今では納品まで数か月待ちという嬉しい悲鳴をあげているほどです。2a3a1667
「先日はヨーロッパの方がいきなり工場にいらして、英語で話し始めたんですよ。こっちは必至で説明したんだけど、これからの職人は英語ができなくちゃダメですね(笑)」と義人さん。でも、一生懸命に造ったものが、多くの方に認めてもらえて、待ってでも買っていただけるということはとても嬉しいと顔をほころばせます。
また、インターネットなどで情報が拡散されたおかげで、後継者問題にも光が見えてきています。最近は「鍛冶職人になりたい」と「五香刃物製作所」を訪ねてくる若者も数人いて、その中から現在、「本気で技を覚えたい!」と弟子入りしている19歳の若手の育成にも力を入れています。
「うちは僕自身が40代なので、まだまだこの世界ではヒヨッコですし、若い子が頑張ってくれていますので、もっと頑張らないと。他の職人さんのところでも、志をもった後継ぎができて、千葉工匠具の伝統工芸全体を後世につないでいければと思っています」。

伝統技術の心構え「真・行・草」

伝統の技は書道でいう「真・行・草」と同じ。本来の形=基本を(真)を守る、それを少しくずして応用する(行)、さらに分解・再構築ができる(草)までが匠の技といえるのだとか。義人さん自身、まだまだ「草」の境地までいけないし、いつそれができるのかはわからないといいます。
「2、3年で一丁をなんとか形にできるようになって、5年でまあまあなものが造れるようになる。どこをどうすればいいのか考えられるようになってきて、10年で一人前かなぁと。うちの親方はとてもやさしい人で、僕は仕事を覚える環境に恵まれていましたね。僕自身は親方とまったく同じ教え方はできないし、教えるためのマニュアルもないけど、今までやってきたことを理論づけて説明することはできると思うんです。僕なりのやり方で継承していきたいです」と義人さん。これからも地元の人が自慢できる「誇れる高品質なもの」を造り続けたいと語られました。
2a3a1719■展示館には「五香刃物製作所」で取り扱っている刃物がズラリ圧巻!

 

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「株式会社 五香刃物製作所」 2a3a1638
住所:千葉県柏市藤ヶ谷369-10
TEL:04-7193-0271
営業日:月~金曜9:00〜18:00(土曜〜12:00)
休業日:土曜午後、日曜、祝日
HP:http://gokouhamono.com/

 

 

 

 



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